金沢 紅葉の美しい武家屋敷 寺島蔵人邸|金沢・観光スポット

英語のスペシャリスト・金沢在住の通訳案内士のfumieです。

金沢はよく小京都と呼ばれることがありますが、公家文化の栄えた京都と違って、金沢は武家が金沢の文化を支えてきました。

侍の街・金沢で武家屋敷といえば、長町武家屋敷跡の野村家が有名です。

ですが野村家は、加賀藩の支藩・大乗寺藩で北前船で財を成した商人の家を野村家の敷地に移築したもので、厳密には「武家屋敷」ではありません。

では「本物の」武家屋敷はどこにあるのでしょう?それが今回ご紹介する武家屋敷 寺島蔵人(くらんど)邸です。そしてこの武家屋敷は金沢の紅葉スポットとしても知られています。

【寺島蔵人邸】中級武士の武家屋敷

武家屋敷 寺島蔵人邸は金沢城公園の大手門口から歩いて5分余り。静かな住宅街の中にあります。

ここ寺島蔵人邸は一般に公開されている金沢で唯一の武家屋敷です。

寺島蔵人は18世紀末から19世紀初めにかけて加賀藩に仕えた中級武士です。文武両道で知られ、画家としての才能を認められていました。

紅葉スポットとして有名な武家屋敷

紅葉スポットとしても有名な寺島蔵人邸。毎年紅葉の季節になると樹齢300年のドウダンツツジの紅葉を目当てに、地元の人や観光客が訪れます。

たまたま前を通ったらこの貼り紙が。紅葉の見頃を知らせる記事が毎年地元新聞にも載ります。

混雑を避け、朝一番を狙ってお邪魔しました!

【蔵人の庭園】兼六園と同じ池泉回遊式庭園

玄関を入って中へ進むと13畳の奥座敷が。左には床の間。右手にはお茶室があります。奥座敷からお庭の様子がよく見えます。 

開け放された木戸から鮮やかな紅葉が目に飛び込んできました。障子で切り取られてまるで一幅の絵画のようです。

スケールこそ違いますが、兼六園と同じ池泉回遊式庭園。庭の中央に池を配して、その周囲を歩いて移りゆく自然の景色を楽しむ趣向の庭園です。

土間からお庭へは自由に散策することができます。

【乾泉(かんせん)】蔵人の名付けた庭園

お庭の池には元々水が張られず、蔵人が「乾泉」という名前をつけたそうです。枯れた雰囲気に趣を感じます。

庭の飛び石や石橋は、金沢の戸室山などから切り出された戸室石などを使っています。

戸室石は金沢城の石垣にも使われていて、当時中級以上の武士でないと使うことを許されていませんでした。

学芸員さんによると、日当たりの良いドウダンツツジから紅葉が始まり、11月下旬にはすっかり真っ赤に染まるそうです。それも見てみたいです!

【関守石】外国人もびっくり!これって何の石?

日本庭園でよく見かける、縄で十字に結ばれた石。これが何かご存知ですか?

これは「関守石」と呼ばれる石で、これより先には立ち入らないでください、というサインです。

兼六園でも見かけるのでガイド中によくゲストから質問されます。

GUEST : “What’s that stone for?”(あの石、何のためにあるの?)

FUMIE : ”That’s a NO ENTRY sign. You’re not allowed to go beyond the stone”(あれは立ち入り禁止のサインです。あの石を越えてはいけないということです)

これには大抵どのゲストもびっくりされます。言葉ではっきり伝える欧米とは違う、日本の非言語コミュニケーションをお伝えします。

築240年 蔵人こだわりの武家屋敷

当時の屋敷の間取り図です。今残っているのはその半分ほど。寺島邸は今からおよそ240年前、安永6年(1777年)に建てられました。

間取り図の下の南側には門があったようです。長屋(ながや)門という、中級武士の屋敷にある門です。

長屋門の左手には馬屋があり、右手には仲間(ちゅうげん)という主人の身の回りの世話や雑事を任された人が住んでいました。

庭に面した廊下を歩くとキィキィと軋んだ音がします。ウグイス張りの廊下です。

京都の二条城の廊下にもこのウグイス張りが施してあります。昔の防犯用の警報装置ですね。やはり侍の家だけあります。

部屋の正面に「玉琴」と書かれた額が掲げられた四畳のお部屋。お茶室のしつらえになっていますが、元々はお琴を弾くために作られたお部屋です。

19世紀の初め、浦上玉堂(ぎょくどう)という画家が、金沢滞在中にちょくちょく寺島邸を訪れて、この部屋で琴を弾いたと伝えられています。

部屋の奥の天井が少し高くなっているのは、琴の音響のためだとか。ここで奏でられる琴の音を聴いてみたくなりました。

茶室「乾泉庵」です。ここでお庭を眺めながらいただくお茶は格別でしょうね!壁の色や床の間など、あちこちに蔵人のこだわりを感じます。

蔵人は”SAMURAI ARTIST”

蔵人は加賀藩に使える侍でしたが、同時にアーティストでもありました。

右は蔵人の描いた山水画、左の書も蔵人の作品です。画人として秀でた人だったんですね。

お庭やお茶室、琴の部屋を見ても、相当美意識の高い人だったのではないかと想像できます。

外国人は、日本の侍は刀を振り回す野蛮なイメージを抱きがちですが、実は侍の中には、Warrior(戦士)だけでなくArtist(アーティスト)もいました。

そして教養のある侍がCool(かっこいい)だったのではないかと思います!

能登島に流刑され生涯を終えた蔵人

19世紀初め、加賀藩の財政を任されていた蔵人は、12代藩主前田斉広(なりなが)に藩の政治を改革するためのメンバーに抜擢されました。

でも間も無く斉広が亡くなり、藩の重臣と折り合いが悪くなって、能登半島の能登島に流されてしまいました。

蔵人はそこで生涯を終えたそうです。

【さいごに】

この庭を眺めることもなく一生を終えた蔵人はさぞ無念だったことでしょう。

死後180年経て屋敷は残され、今も変わらず美しい紅葉を楽しみに訪れる人がいると想像できたでしょうか?

蔵人が愛でたお庭を眺めながら、今年も鮮やかな紅葉を見ることができたことをありがたく感じます。

武家屋敷 寺島蔵人邸へのアクセス

金沢城公園の大手門から徒歩約5分。最寄りのバス停は橋場町です。

金沢城公園とひがし茶屋街の中間地点にあります。

名称武家屋敷 寺島蔵人邸
住所〒920-0912 金沢市大手町10番3号
電話番号076ー 224-2789
休館日年末年始 (12月29日~1月3日)※展示資料整理等のための臨時休館有り
開館時間9時30分~17時まで(入館は16時30分まで)
入館料一般 310円
団体(20名以上)260円
65歳以上・障害者手帳をお持ちの方およびその介護人 210円(祝日無料)
高校生以下 無料
抹茶料 お一人350円(現在休止中)
駐車場なし

投稿者プロフィール

fumie
金沢生まれほぼほぼ金沢育ち。28年間英会話講師を務め、長年の夢だった全国通訳案内士の資格を取得。金沢を訪れる海外からの旅行者をアテンドしています。趣味は、英語学習。留学経験なしの「純ジャパ」で英検1級、TOEIC950点を取得した経験を生かして英語学習者に役立つ情報とガイドの仕事で得た地元・金沢の情報とその魅力を紹介していきます。

この記事を書いた人

fumie

金沢生まれほぼほぼ金沢育ち。28年間英会話講師を務め、長年の夢だった全国通訳案内士の資格を取得。金沢を訪れる海外からの旅行者をアテンドしています。趣味は、英語学習。留学経験なしの「純ジャパ」で英検1級、TOEIC950点を取得した経験を生かして英語学習者に役立つ情報とガイドの仕事で得た地元・金沢の情報とその魅力を紹介していきます。